大切な植物を病気から守るには?



1 植物はなぜ病気になるのでしょう?

植物の病気を引き起こす条件として、主として3つが上げられます。温度と湿度(水分)、そして病原菌の存在です。この3つのどれか一つでも満たされないと病気は発病しません。言い換えれば、3つの条件が重なって始めて、病気になってしまうのです。発病する温度と湿度は病原体により異なります。病気の発病の仕組みを知るためには、病原体(細菌、ウイルス、糸状菌など)の詳しい生態(生活史)を知ることが重要です。

上記の症状とは別に、病気ではないけれども、ある特定の微量要素などが不足(欠乏)して症状として現れる「生理障害」、特定の薬剤や散布した薬剤の濃度などが不適当で起こる「薬害」などがあります。これらと病気とを区別することが難しい場合もありますが、様々な見地から判断していくことである程度可能です。

2 あなたの植物は健康ですか?

植物を病気から守るためには、上記の3つのうちいずれかを植物から遠ざけてやればよいということになります。3つの条件以外に発病程度を左右するものとして、植物体がどれだけ健全かどうかということがあります。健康かどうかは一瞥してわかりにくいですが、植物を人間に例えて見て下さい。

食べ過ぎる(肥料のやりすぎ)と具合が悪くなりますね。また、人ごみ(密植)では、気分が悪くなることがありますね。風通しの悪いところには、長時間居たくないですし、蒸し暑い(湿度が高い)のも苦手です。このように、人間が居心地の悪い所では、植物も同じなわけです。植物には、人間と直接会話できる言葉を持ちませんし、いやだといって逃げていくことはできないのです。そのような悪条件下に長くおかれると、いやでも病気にかかってしまうのです。

植物がどのような栄養状態(健康かどうか)にあるかということを把握することが、病気の予防のために如何に重要であるか、少しお解りいただけたでしょうか。

健康な植物体であれば、不幸にも病気にかかってしまってもその発病程度は軽く、回復するのも早いものです。

病気になりにくい環境、植物にとって居心地のいい環境(人間にとってもですが)を創ることが、最も大切なことだと思います。

3 不幸にして病気になってしまったら・・・

とにかく早く対策を講じることが必要です。時間が経てば経つほど回復しにくくなります。

病気にかかってしまった植物をそれ以上ひどくならないようにすること、もしくは植物を病気にかからないようにすることを「防除」(ぼうじょ)と呼びます。防除というと、短絡的に頭に浮かぶのが「薬剤散布」ですが、それだけがすべてではありません。

物理的防除

病原体から植物を遠ざけることや薬剤を用いる代わりに温湯などを用いて防除することを指して、物理的防除と呼びます。具体的には、防風ネットを張り風を弱めるとか、種子の消毒に温湯を用いるとか、紫外線カットフィルムを張り、糸状菌(かび類)の発育を抑制するなど、さまざまな方法が行われています。

耕種的防除

病原体に侵されにくい作型・栽培方法で植物(作物)を栽培することを耕種的防除と呼びます。具体的には、畦にマルチングをして土の跳ね上がりを防止するとか、ある病原体に侵されにくい品種を選んで栽培するとか、栽培し難い時期を避けて栽培するなどの方法がとられています。また、野菜類では、イネ科植物との輪作(りんさく)も病気抑制に高い効果があります。

生物的防除

ある病原体に対して、拮抗的(きっこうてき)な働きをする菌などを利用して防除を行うことです。例えば、土壌消毒のあとに枯草菌(こそうきん)などを投入して、土壌中の菌の種類を増やして、それらの働きによって発病を抑えたり、遅らせたりする方法がとられています。

化学的防除

これはいわゆる薬剤散布といわれる方法ですが、最近では散布方法も新しいものが開発されています。例えば、静電散布(せいでんさんぷ)などできるだけ少量の薬剤を効率的に植物体へ付着させる方法や、ラジコンヘリやスプリンクラーを用いるなど、作業者にとって負担をより少なくできるようになってきています。また、薬剤自体も今まで以上に環境に配慮したものが開発されています。

上記の4つの方法をうまく組み合わせて防除することが、総合的に見て有効であると思います。

4 どうすれば効率的に植物の病気が減らせるの?

我が国では、指定された植物に限ってですが、発生予察事業というものが行われています。この一翼を担っているのが各地にある病害虫防除所とよばれる機関です。ですから、そこから出される情報(注意報、警報など)に対して日頃から注意を払っておくことが必要です。幸い、最近では多くの病害虫防除所がインターネット上で情報を発信してくれています。これらについては、ぜひリンク集をご覧下さい。

これを補うものとして、全国レベルでの農業者や関係機関による情報交換があります。

最後になりますが、病気から守るために最も大切なものは貴方の「眼」です。観察眼を最大限養っていただき、遅れないように早め早めに対応していくことに優るものはありません!


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This site last updated: 27 Nov., 2004

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